Vibe Codingとは何か
Andrej Karpathyのツイートから始まったvibe coding
2025年2月2日、AI研究者のAndrej Karpathyが一つの投稿をしました。
“There’s a new kind of coding I call ‘vibe coding’, where you fully give in to the vibes, embrace exponentials, and forget that the code even exists.”
「vibe codingと呼ぶ新しいコーディングスタイルがある。完全にバイブスに身を任せ、指数関数的成長を受け入れ、コードの存在すら忘れるのだ」
この投稿は450万回以上閲覧され、テック業界に衝撃を与えました。
Karpathyは続けてこう説明しています。
“I ‘Accept All’ always, I don’t read the diffs anymore. When I get error messages I just copy paste them in with no comment, usually that fixes it.”
「私は常に『Accept All』を選ぶ。もう差分は読まない。エラーメッセージが出たら、コメントなしでそのままコピペする。大抵それで直る」
OpenAIの共同創業者であり、元Teslaの AI責任者でもあるKarpathyのこの発言は、多くの開発者の心を掴みました。
なぜ「vibe」なのか
「vibe」とは英語のスラングで「雰囲気」「フィーリング」を意味します。
従来のプログラミングでは、開発者はコードの一行一行を理解し、ロジックを組み立て、デバッグを行っていました。それは論理的で、体系的な作業でした。
しかしvibe codingでは、そのプロセスが根本的に変わります。
従来の開発:
1. 要件を理解する
2. 設計を考える
3. コードを書く
4. テストする
5. デバッグする
6. リファクタリングする
vibe coding:
1. AIに「こういうの作って」と伝える
2. 生成されたコードをAccept All
3. 動かなければエラーをコピペ
4. 動いたらOK
コードを「書く」のではなく、AIに「お願いする」。 コードを「理解する」のではなく、「動くかどうか確認する」。
これがvibe codingの本質です。
vibe codingの爆発的な普及
Karpathyの投稿からわずか1ヶ月後、「vibe coding」はMerriam-Webster辞書に「スラング・トレンド」として掲載されました。
そして2025年末、Collins Dictionaryはvibe codingを 「Word of the Year 2025」 に選出しました。
同時期、Y Combinatorは衝撃的な統計を発表しています。
2025年冬期バッチのスタートアップの 25% が、コードベースの 95%以上 をAIで生成している
つまり、4社に1社が「ほぼ全てAIに書かせている」状態だったのです。
vibe codingを可能にした技術
なぜ2025年になってvibe codingが可能になったのでしょうか。
LLMの能力向上
Claude Sonnet、GPT-4、Geminiなどの大規模言語モデル(LLM)の推論能力が飛躍的に向上しました。特にコード生成において、文脈を理解し、一貫性のあるコードを出力できるようになりました。
AIに伝えるべきコンテキスト情報ウィンドウの拡大
以前のモデルは数千トークンしか処理できませんでしたが、2025年のモデルは数十万トークンを一度に処理できます。これにより、大規模なコードベース全体を「見せる」ことが可能になりました。
IDE統合の進化
Cursor、GitHub Copilot、Claude Codeなどのツールが、開発環境とシームレスに統合されました。「話しかけるだけ」でコードが生成され、ファイルが更新されます。
音声入力の実用化
Karpathyが言及したSuperWhisperのような音声入力ツールにより、キーボードに触れずにコーディングすることも可能になりました。
vibe codingの定義を整理する
ここで、vibe codingの定義を整理しておきましょう。
Simon Willisonは重要な区別を提唱しています。
“If an LLM wrote every line of your code, but you’ve reviewed, tested, and understood it all, that’s not vibe coding in my book—that’s using an LLM as a typing assistant.”
「LLMがコードの全行を書いたとしても、レビュー、テスト、理解をしていれば、それはvibe codingではない。LLMをタイピングアシスタントとして使っているだけだ」
つまり、コードを理解しているかどうか がvibe codingの境界線なのです。
| カテゴリ | コードの理解 | レビュー | 適切な場面 |
|---|---|---|---|
| Pure Vibe Coding | しない | しない | 使い捨てプロジェクト |
| AI支援開発 | する | する | 本番コード |
| ハイブリッド | 部分的 | 選択的 | プロトタイプ |
Karpathyの真意
興味深いことに、Karpathyは同じ投稿でこうも述べています。
“It’s not too bad for throwaway weekend projects, but still quite amusing.”
「使い捨ての週末プロジェクトなら悪くないが、それでもかなり面白い」
つまり、Karpathy自身もvibe codingを 「使い捨てプロジェクト向け」 と位置づけていたのです。
しかし、この「週末プロジェクト向け」という但し書きは、多くの人には届きませんでした。
「Accept All」「差分は読まない」というキャッチーなフレーズだけが一人歩きし、本番環境のプロダクトにまで適用されるようになっていったのです。
この記事の立場
この記事では、vibe codingの失敗事例を分析し、そこから学ぶべき教訓を抽出します。
私たちは、vibe codingを全否定するつもりはありません。適切な場面で使えば、強力なツールになり得ます。
しかし、「いつ使うべきか」「いつ使うべきでないか」 を理解せずに使えば、破滅的な結果を招きます。
これから紹介する7つの事件は、その教訓を痛烈に示しています。
まとめ:重要ポイントの振り返り
- vibe codingは2025年2月、Andrej Karpathyが提唱
- 「コードを理解せずにAIに任せる」開発スタイル
- LLMの進化、IDE統合、音声入力が普及を後押し
- Collins Dictionary「Word of the Year 2025」に選出
- Y Combinator 2025冬期バッチの25%が95%以上AI生成
- Karpathy自身は「使い捨てプロジェクト向け」と但し書き
- しかし、本番環境にまで適用される事態に