vibe codingの失敗事例 2025年3月26日

専門家たちが警告するvibe codingの危険性

これまで紹介してきた事件は、すべて現実に起きたことです。 そして、これらの問題を予見し、警告していた専門家たちがいます。 本章では、vibe codingに対する業界リーダーたちの警告を紹介します。

川西智也

合同会社ロイヤルピース 代表

専門家たちの警告

AI開発:業界リーダーたちの警告

これまで紹介してきた事件は、すべて現実に起きたことです。

そして、これらの問題を予見し、警告していた専門家たちがいます。

本章では、vibe codingに対する業界リーダーたちの警告を紹介します。


James Gosling(Java創造者)

プログラミング言語Javaを創造したJames Goslingは、vibe codingについて厳しい見解を示しています。

“As soon as your [vibe coding] project gets even slightly complicated, they pretty much always blow their brains out.” 「vibe codingのプロジェクトが少しでも複雑になると、ほぼ確実に破綻する」

さらに、エンタープライズ用途については明確に否定しています。

“Not ready for the enterprise because in the enterprise, [software] has to work every fucking time.” 「エンタープライズには使えない。エンタープライズでは、ソフトウェアは毎回確実に動かなければならないからだ」

40年以上のソフトウェア開発経験を持つGoslingの言葉は、重みがあります。


Cursor CEO Michael Truell

皮肉なことに、vibe codingツールの代表格であるCursor自身のCEO、Michael Truellも警告を発しています。

“Vibe coding refers to a method of coding with AI where you kind of close your eyes and you don’t look at the code at all…” 「vibe codingとは、目を閉じてコードを一切見ないAIコーディングのことだ…」

そして、その危険性についてこう述べています。

“If you close your eyes and you don’t look at the code and you have AIs build things with shaky foundations as you add another floor, and another floor, things start to kind of crumble.” 「目を閉じてコードを見ずに、AIに不安定な基盤の上に階を重ねさせていくと、やがて崩れ始める」

ツールの提供者自身が、その危険な使い方を警告している のです。


Simon Willison(Django共同作成者)

Djangoフレームワークの共同作成者であるSimon Willisonは、vibe codingの定義について重要な区別を提唱しています。

“If an LLM wrote every line of your code, but you’ve reviewed, tested, and understood it all, that’s not vibe coding in my book—that’s using an LLM as a typing assistant.” 「LLMがコードの全行を書いたとしても、レビュー、テスト、理解をしていれば、それはvibe codingではない。LLMをタイピングアシスタントとして使っているだけだ」

つまり、問題は 「AIを使うこと」ではなく「コードを理解しないこと」 なのです。


CTOたちの現場報告

現場のCTOたちも、vibe codingの問題を報告しています。

Patric Edwards(Cirrus Bridge創業者):

“A junior developer used a combination of AI code suggestions and Stack Overflow snippets to ‘vibe’ their way through building a user permission system.”

結果:

  • 開発環境では動作
  • テストにパス
  • 初期QAも通過
  • しかし、2週間後に重大なセキュリティ問題が発覚

Edwardsは、この経験から 「Trust Debt(信頼負債)」 という概念を提唱しています。


vibe codingの「疑似開発者」問題

専門家たちは、vibe codingが生み出す新たな問題を指摘しています。

“The fundamental problem is that vibe coding creates what experts call ‘pseudo-developers.’ These are people who can generate code but can’t understand, debug, or maintain it.” 「根本的な問題は、vibe codingが『疑似開発者』を生み出すことだ。コードを生成できるが、理解・デバッグ・保守はできない人々のことだ」

疑似開発者の特徴:

できることできないこと
AIにコード生成を依頼コードの説明
「Accept All」のクリックデバッグ
エラーメッセージのコピペ根本原因の特定
プロトタイプの作成長期的な保守

「最初に置き換えられるのはvibe coder」

AIが開発者を置き換えるという議論がありますが、専門家たちは異なる見解を示しています。

“The first to get replaced will be the vibe coders. The ones who thrive will be those who know how to guide the tools, not just follow them.” 「最初に置き換えられるのはvibe coderだ。生き残るのは、ツールに従うだけでなく、ツールを導ける人々だ」

2つの開発者タイプ:

タイプ特徴将来
vibe coderAIの出力を無批判に受け入れる置き換え対象
AI支援開発者AIを道具として使いこなす需要増加

AI開発が抱える究極のパラドックス

vibe codingに関する最も皮肉なパラドックスがあります。

“Here’s the brutal paradox: The people who use AI most effectively are the ones who need it the least. They are the experts who use it to accelerate, not to guess.” 「残酷なパラドックスがある。AIを最も効果的に使える人は、AIを最も必要としない人々だ。彼らは推測するためではなく、加速するためにAIを使う専門家たちだ」

AIコーディングツールの恩恵を最大限に受けるのは、すでにコーディングスキルを持っている人々です。

一方、スキルのない人がAIに頼ると、スキルを身につける機会を失い、依存の罠に陥ります。


ジュニア開発者への警告

特に、ジュニア開発者に対する警告は厳しいものです。

“For junior developers, vibe coding represents a career death trap. Industry experts consistently warn that it’s ‘probably the worst thing you can do for your career right now.’” 「ジュニア開発者にとって、vibe codingはキャリアの死の罠だ。業界の専門家たちは一貫して『今キャリアにとって最悪の選択肢』だと警告している」

ジュニア開発者の進退両難:

経験がない

AIに頼る

理解せずにコードを受け入れる

経験が蓄積されない

(ループ)

AI開発の役割変化:「著者」から「編集者」へ

専門家たちは、開発者の役割の変化も指摘しています。

“The most valuable developer in 2025 isn’t the one who can write code the fastest. It’s the one who can edit code the best. We are moving from ‘Authors’ to ‘Editors.’” 「2025年に最も価値のある開発者は、最速でコードを書ける人ではない。最も上手くコードを編集できる人だ。我々は『著者』から『編集者』へと移行している」

「編集者」としての開発者に求められるスキル:

  1. AIが生成したコードをレビュー
  2. セキュリティ脆弱性を発見
  3. アーキテクチャの整合性を確保
  4. パフォーマンスを最適化
  5. 保守性を向上

希望の光

警告ばかりではありません。適応する開発者には希望があります。

“The vibe coding era doesn’t remove juniors from the process—it just changes the process entirely. The upside is that juniors who adapt to AI early might move up faster.” 「vibe coding時代はジュニアをプロセスから排除しない。プロセス全体を変えるだけだ。早期にAIに適応したジュニアは、より速く昇進できる可能性がある」

条件:

  • 基礎的なスキルを身につけること
  • AIを「魔法」ではなく「道具」として使うこと
  • コードを理解し、レビューすること

この事例から学ぶべき教訓

専門家たちの警告から学ぶべきことは以下の通りです。

  1. vibe codingはエンタープライズには向かない

    • Gosling「毎回確実に動かなければならない」
  2. コードを見ないと崩れる

    • Truell「不安定な基盤に階を重ねると崩れる」
  3. 理解すればvibe codingではない

    • Willison「レビュー・テスト・理解すればタイピングアシスタント」
  4. vibe coderは最初に置き換えられる

    • 専門家「ツールを導ける人が生き残る」
  5. AIを効果的に使えるのは専門家

    • 「最も必要としない人が最も効果的に使える」

まとめ:重要ポイントの振り返り

  • Java創造者James Gosling「エンタープライズには使えない」
  • Cursor CEO Michael Truell「目を閉じると崩れる」
  • Django作者Simon Willison「理解すればvibe codingではない」
  • CTOたち「Trust Debt(信頼負債)」の警告
  • 専門家「vibe coderは最初に置き換えられる」
  • 教訓:AIを最も効果的に使えるのは、AIを必要としない専門家

参考リンク・出典

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