vibe codingの失敗事例 2025年9月13日

【Builder.AI崩壊】$15億企業がゼロになるまで

Builder.AIは、イギリス発のスタートアップでした。 **「技術的な専門知識なしでソフトウェアを作れる」** ——そんなvibe codingの夢を体現したプラットフォームでした。 投資家たちはこのビジョンに熱狂しました。

川西智也

合同会社ロイヤルピース 代表

Builder.AI $15億からゼロへ

ユニコーンの誕生

Builder.AIは、イギリス発のスタートアップでした。

「技術的な専門知識なしでソフトウェアを作れる」 ——そんなvibe codingの夢を体現したプラットフォームでした。

投資家たちはこのビジョンに熱狂しました。

投資実績:

投資家内容
Microsoft出資、Azure統合を発表
SoftBank DeepCore出資
Qatar Investment Authority出資
総調達額$4.5億以上
評価額(ピーク時)$15億

MicrosoftとSoftBankが支援するユニコーン——Builder.AIは、vibe codingの未来を象徴する存在でした。


Builder Studioの約束

Builder.AIの主力製品「Builder Studio」は、革新的な機能を謳っていました。

公式の謳い文句:

  • コーディング不要でアプリを構築
  • AIアシスタント「Natasha」が開発を支援
  • アプリの 80%はAIが自動生成
  • 技術者不要でビジネスアプリを作成

多くの企業がこの約束を信じ、Builder.AIにアプリ開発を依頼しました。


「AIの裏側」の真実

しかし、2019年、Wall Street Journalが衝撃的な事実を報道しました。

「Builder.AIのAIは、実際には人間のエンジニアによって動かされていた」

真実:

  • AIアシスタント「Natasha」の裏側には 700人のインド人エンジニア
  • 「80%がAI生成」という主張は虚偽
  • 実際のAI技術は「ほとんど機能していなかった」
  • 人間が手作業でコーディングしていた

当時、会社は「Engineer.ai」という名前でした。批判を受けて「Builder.AI」に改名しましたが、本質は変わっていませんでした。


投資家への誤解

法的書類によると、Builder.AIは投資家を誤解させていました。

「アプリの80%はAIによって構築される」という主張に対し、その技術はほとんど機能していなかった

投資家たちは、AI企業 に投資していると信じていました。しかし実際には、人件費のかかる従来型の開発会社 に投資していたのです。

これは、vibe codingに対する過度の期待が生んだ 「AI詐欺」 の典型例でした。


vibe codingプロジェクトの崩壊への道

2025年、Builder.AIは急速に崩壊しました。

タイムライン:

時期出来事
2023年5月Microsoftが出資、Azure統合を発表
2025年2月創業者Sachin Dev Duggalが退任
2025年2月新CEO Manpreet Ratiaが就任
2025年2月270人を解雇、経費削減
2025年5月債権者Viola Creditが$3,700万を差し押さえ
2025年5月残高$500万で破産申請

$15億の評価額から、残高$500万へ。

わずか2年で、ユニコーンは消滅しました。


vibe codingプロジェクトの顧客たちの悲劇

Builder.AIの崩壊は、多くの顧客に壊滅的な影響を与えました。

被害例:

あるEdTechスタートアップは、$65,000(約1,000万円) を支払ってBuilder.AIでアプリを構築していました。

破産により、彼らのビジネス全体が 「人質に取られた」 状態になりました。

  • アプリのソースコードにアクセスできない
  • プラットフォームが停止し、アプリが動作しない
  • 別のプラットフォームへの移行もできない

vibe codingプラットフォームに依存することの ベンダーロックインリスク が、最悪の形で現実化したのです。


「AI洗浄」の問題

Bloomberg は、この事件を 「AI Washing(AI洗浄)」 の問題として報じました。

AI洗浄とは:

  • 実際にはAIをほとんど使っていない
  • しかし「AI」を冠して投資を集める
  • 過大な期待を煽る

Builder.AIは、その最も顕著な例でした。

しかし、これはBuilder.AIだけの問題ではありません。vibe codingブームの中で、多くの企業が 「AI」を誇大広告 していました。


vibe codingプラットフォームのリスク

Builder.AIの崩壊は、vibe codingプラットフォーム全般のリスクを浮き彫りにしました。

リスク一覧:

リスク説明
ベンダーロックインプラットフォームが停止するとアプリも停止
技術の不透明性「AI」の実態が分からない
財務リスクプラットフォーム会社の破産
データ喪失ソースコード、データへのアクセス不能
移行困難別プラットフォームへの移行が難しい

vibe codingプラットフォームを選ぶことは、その会社の運命に 自社のビジネスを委ねる ことを意味します。


技術的真実の重要性

この事件から学ぶべき最も重要な教訓は、技術的真実を見極める目 の重要性です。

確認すべきこと:

  1. 「AI」は本当にAIか、それとも人間か
  2. 技術は実際に機能しているか
  3. 会社の財務状況は健全か
  4. プラットフォームが停止した場合の代替策はあるか
  5. ソースコードのエクスポートは可能か

vibe codingプラットフォームを選ぶ際には、マーケティングではなく技術的実態 を確認する必要があります。


この事例から学ぶべき教訓

Builder.AI崩壊から学ぶべきことは以下の通りです。

  1. 「AI」は誇大広告の可能性がある

    • 700人の人間がAIの裏側にいた
  2. ベンダーロックインは致命的

    • プラットフォーム崩壊でビジネス全体が停止
  3. 投資家の支援は保証にならない

    • MicrosoftとSoftBankが支援しても破産
  4. ソースコードの所有権を確認せよ

    • アクセス不能になる可能性
  5. プラットフォームの財務状況を確認せよ

    • スタートアップは突然破産しうる
  6. 出口戦略を持て

    • プラットフォーム停止時の移行計画

まとめ:重要ポイントの振り返り

  • Builder.AIはMicrosoft、SoftBank支援のvibe codingプラットフォーム
  • 評価額 $15億 のユニコーン
  • 「AIアシスタントNatasha」の裏側には 700人の人間エンジニア
  • 2025年5月に 破産 、評価額ゼロに
  • 顧客のビジネスが「人質」状態に
  • 教訓:「AI」は誇大広告の可能性がある

参考リンク・出典

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