Builder.AI $15億からゼロへ
ユニコーンの誕生
Builder.AIは、イギリス発のスタートアップでした。
「技術的な専門知識なしでソフトウェアを作れる」 ——そんなvibe codingの夢を体現したプラットフォームでした。
投資家たちはこのビジョンに熱狂しました。
投資実績:
| 投資家 | 内容 |
|---|---|
| Microsoft | 出資、Azure統合を発表 |
| SoftBank DeepCore | 出資 |
| Qatar Investment Authority | 出資 |
| 総調達額 | $4.5億以上 |
| 評価額(ピーク時) | $15億 |
MicrosoftとSoftBankが支援するユニコーン——Builder.AIは、vibe codingの未来を象徴する存在でした。
Builder Studioの約束
Builder.AIの主力製品「Builder Studio」は、革新的な機能を謳っていました。
公式の謳い文句:
- コーディング不要でアプリを構築
- AIアシスタント「Natasha」が開発を支援
- アプリの 80%はAIが自動生成
- 技術者不要でビジネスアプリを作成
多くの企業がこの約束を信じ、Builder.AIにアプリ開発を依頼しました。
「AIの裏側」の真実
しかし、2019年、Wall Street Journalが衝撃的な事実を報道しました。
「Builder.AIのAIは、実際には人間のエンジニアによって動かされていた」
真実:
- AIアシスタント「Natasha」の裏側には 700人のインド人エンジニア
- 「80%がAI生成」という主張は虚偽
- 実際のAI技術は「ほとんど機能していなかった」
- 人間が手作業でコーディングしていた
当時、会社は「Engineer.ai」という名前でした。批判を受けて「Builder.AI」に改名しましたが、本質は変わっていませんでした。
投資家への誤解
法的書類によると、Builder.AIは投資家を誤解させていました。
「アプリの80%はAIによって構築される」という主張に対し、その技術はほとんど機能していなかった
投資家たちは、AI企業 に投資していると信じていました。しかし実際には、人件費のかかる従来型の開発会社 に投資していたのです。
これは、vibe codingに対する過度の期待が生んだ 「AI詐欺」 の典型例でした。
vibe codingプロジェクトの崩壊への道
2025年、Builder.AIは急速に崩壊しました。
タイムライン:
| 時期 | 出来事 |
|---|---|
| 2023年5月 | Microsoftが出資、Azure統合を発表 |
| 2025年2月 | 創業者Sachin Dev Duggalが退任 |
| 2025年2月 | 新CEO Manpreet Ratiaが就任 |
| 2025年2月 | 270人を解雇、経費削減 |
| 2025年5月 | 債権者Viola Creditが$3,700万を差し押さえ |
| 2025年5月 | 残高$500万で破産申請 |
$15億の評価額から、残高$500万へ。
わずか2年で、ユニコーンは消滅しました。
vibe codingプロジェクトの顧客たちの悲劇
Builder.AIの崩壊は、多くの顧客に壊滅的な影響を与えました。
被害例:
あるEdTechスタートアップは、$65,000(約1,000万円) を支払ってBuilder.AIでアプリを構築していました。
破産により、彼らのビジネス全体が 「人質に取られた」 状態になりました。
- アプリのソースコードにアクセスできない
- プラットフォームが停止し、アプリが動作しない
- 別のプラットフォームへの移行もできない
vibe codingプラットフォームに依存することの ベンダーロックインリスク が、最悪の形で現実化したのです。
「AI洗浄」の問題
Bloomberg は、この事件を 「AI Washing(AI洗浄)」 の問題として報じました。
AI洗浄とは:
- 実際にはAIをほとんど使っていない
- しかし「AI」を冠して投資を集める
- 過大な期待を煽る
Builder.AIは、その最も顕著な例でした。
しかし、これはBuilder.AIだけの問題ではありません。vibe codingブームの中で、多くの企業が 「AI」を誇大広告 していました。
vibe codingプラットフォームのリスク
Builder.AIの崩壊は、vibe codingプラットフォーム全般のリスクを浮き彫りにしました。
リスク一覧:
| リスク | 説明 |
|---|---|
| ベンダーロックイン | プラットフォームが停止するとアプリも停止 |
| 技術の不透明性 | 「AI」の実態が分からない |
| 財務リスク | プラットフォーム会社の破産 |
| データ喪失 | ソースコード、データへのアクセス不能 |
| 移行困難 | 別プラットフォームへの移行が難しい |
vibe codingプラットフォームを選ぶことは、その会社の運命に 自社のビジネスを委ねる ことを意味します。
技術的真実の重要性
この事件から学ぶべき最も重要な教訓は、技術的真実を見極める目 の重要性です。
確認すべきこと:
- 「AI」は本当にAIか、それとも人間か
- 技術は実際に機能しているか
- 会社の財務状況は健全か
- プラットフォームが停止した場合の代替策はあるか
- ソースコードのエクスポートは可能か
vibe codingプラットフォームを選ぶ際には、マーケティングではなく技術的実態 を確認する必要があります。
この事例から学ぶべき教訓
Builder.AI崩壊から学ぶべきことは以下の通りです。
-
「AI」は誇大広告の可能性がある
- 700人の人間がAIの裏側にいた
-
ベンダーロックインは致命的
- プラットフォーム崩壊でビジネス全体が停止
-
投資家の支援は保証にならない
- MicrosoftとSoftBankが支援しても破産
-
ソースコードの所有権を確認せよ
- アクセス不能になる可能性
-
プラットフォームの財務状況を確認せよ
- スタートアップは突然破産しうる
-
出口戦略を持て
- プラットフォーム停止時の移行計画
まとめ:重要ポイントの振り返り
- Builder.AIはMicrosoft、SoftBank支援のvibe codingプラットフォーム
- 評価額 $15億 のユニコーン
- 「AIアシスタントNatasha」の裏側には 700人の人間エンジニア
- 2025年5月に 破産 、評価額ゼロに
- 顧客のビジネスが「人質」状態に
- 教訓:「AI」は誇大広告の可能性がある