AI開発アンチパターン 2025年10月3日

救済エンジニアリング:vibe codingからの脱出支援

2024年末から2025年にかけて、業界では驚くべき予測が語られました。 この予測は、現実になりつつあります。 **救急エンジニアリング(Rescue Engineering)** とは、破綻したプロジェクトを救済するエンジニアリングです。

川西智也

合同会社ロイヤルピース 代表

「救急エンジニアリング」時代の到来

AI開発の予言された未来

2024年末から2025年にかけて、業界では驚くべき予測が語られました。

“In 2026, rescue engineering will be the hottest discipline in tech — because thousands of products built via vibe coding can’t support real usage.” 「2026年には『救急エンジニアリング』が技術業界で最もホットな分野になる。vibe codingで構築された何千もの製品が実際の使用に耐えられないからだ。」

この予測は、現実になりつつあります。


救急エンジニアリングとは

救急エンジニアリング(Rescue Engineering) とは、破綻したプロジェクトを救済するエンジニアリングです。

典型的な救急案件:

  1. 完全書き直し

    • 既存コードが理解不能
    • ドキュメントがない
    • 設計が崩壊している
  2. セキュリティ修正

    • 脆弱性が多数
    • 緊急対応が必要
    • 被害を最小限に
  3. パフォーマンス最適化

    • 10ユーザーで動くが1000ユーザーで崩壊
    • 最初から設計されていない
    • ボトルネックの特定から開始
  4. スケーリング対応

    • 成功したが、スケールできない
    • インフラの再設計が必要
    • アーキテクチャの見直し

【警告】8000スタートアップのAI技術的負債危機

別記事で紹介した「8000スタートアップ」の事態を振り返りましょう。

状況:

  • AI支援で「速く」構築されたスタートアップ約8000社
  • その多くが深刻な技術的負債を抱えている
  • リファクタリング不能な状態のものも

具体的な問題:

  • コードが理解できない
  • 機能追加ができない
  • バグ修正に異常な時間がかかる
  • セキュリティ問題が発覚

予想される結末:

  • 一部は「救急エンジニアリング」で救済
  • 多くは「完全書き直し」
  • さらに多くは「廃業」

「vibe codingハングオーバー」

Fast Company(2025年9月)の報道を思い出しましょう。

“The ‘vibe coding hangover’ is upon us, with senior software engineers citing ‘development hell’ when working with AI-generated vibe-code.” 「『vibe codingハングオーバー』がやってきた。シニアエンジニアたちは、AI生成のvibe-codeと格闘する『開発地獄』を訴えている。」

ハングオーバーの症状:

  • 「速く作れた」後の代償
  • デバッグが考古学のよう
  • 修正すると別の場所が壊れる
  • 全員が「何が何だかわからない」

救急エンジニアの仕事

救急エンジニアが行う仕事を見てみましょう。

Phase 1: 状況把握

1. コードベースの分析
   - 規模と複雑度
   - 技術スタック
   - 依存関係

2. 問題の特定
   - セキュリティ脆弱性
   - パフォーマンスボトルネック
   - アーキテクチャの問題

3. リスク評価
   - 最も緊急な問題
   - 修正可能性
   - 必要なリソース

Phase 2: 応急処置

1. セキュリティの緊急対応
   - 最も深刻な脆弱性を修正
   - 不正アクセスの防止
   - ログの確保

2. 安定化
   - クラッシュの防止
   - データ損失の防止
   - サービス継続

Phase 3: 再建計画

1. 書き直しの範囲決定
   - 何を残すか
   - 何を捨てるか
   - 何を新しく作るか

2. 段階的な移行
   - 機能ごとに再構築
   - テストの追加
   - ドキュメントの作成

救急エンジニアリングのコスト

救急エンジニアリングのコストは、最初から正しく作るコストの 何倍 にもなります。

コスト比較:

項目最初から正しく救急エンジニアリング
初期開発10050(速いが品質低)
デバッグ20200
セキュリティ修正10150
書き直し0300
機会損失0500
合計1301200

「速く」作ったつもりが、10倍のコスト になる可能性があります。


救急エンジニアリングを避けるために

救急エンジニアリングが必要になる前に、対策を打ちましょう。

予防策1: 技術的負債の早期発見

  • 定期的なコード品質チェック
  • セキュリティスキャン
  • 技術的負債の可視化

予防策2: 「プロトタイプと本番」の分離

  • vibe codingはプロトタイプまで
  • 本番は技術者が関与
  • 品質基準を設定

予防策3: レビューの義務化

  • AI生成コードは必ずレビュー
  • セキュリティレビュー
  • アーキテクチャレビュー

予防策4: テストの充実

  • 自動テストの導入
  • CIでの実行
  • カバレッジの維持

専門家のキャリアへの示唆

救急エンジニアリングの需要増加は、専門家にとってはキャリアの機会でもあります。

求められるスキル:

  • レガシーコードの理解
  • リファクタリング技術
  • セキュリティの知識
  • アーキテクチャ設計
  • コミュニケーション能力

皮肉な現実:

「vibe coderが増えるほど、彼らの後始末をする専門家の需要が増える」


この事例から学ぶべき教訓と実践ポイント

「救急エンジニアリング時代」から学ぶべきことは以下の通りです。

  1. 2026年は救急エンジニアリングの時代

    • vibe codingの代償が来る
  2. 8000スタートアップが危機

    • 多くが技術的負債で破綻
  3. コストは10倍になりうる

    • 「速く」作っても、後で払う
  4. 予防が最善

    • 早期発見、レビュー、テスト
  5. 専門家の需要は増加

    • 後始末のスキルが求められる

まとめ:重要ポイントの振り返り

  • 「救急エンジニアリング」 が2026年の注目分野に
  • 8000スタートアップ が技術的負債危機
  • 「vibe codingハングオーバー」 :速く作った代償
  • 救急エンジニアリングのコストは 10倍 にもなりうる
  • 予防が最善 :早期発見、レビュー、テスト
  • 教訓:後始末よりも、最初から正しく作れ

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