AI開発アンチパターン 2025年10月24日

非技術者だけでAI開発は可能か?現実と限界

vibe codingは、ある夢を約束しました。 **「技術的な知識がなくても、アプリを作れる」** この夢は、多くの非技術者を惹きつけました。起業家、マーケター、デザイナー——彼らはvibe codingツールを手に取り、アプリ開発に挑戦しました。

川西智也

合同会社ロイヤルピース 代表

アンチパターン⑦「非技術者単独開発」

vibe codingの夢

vibe codingは、ある夢を約束しました。

「技術的な知識がなくても、アプリを作れる」

この夢は、多くの非技術者を惹きつけました。起業家、マーケター、デザイナー——彼らはvibe codingツールを手に取り、アプリ開発に挑戦しました。

しかし、その結果はこれまでの記事で見てきた通りです。


「ゼロ手書き」SaaS事件

別記事で紹介した事件を思い出しましょう。

最初のツイート:

“guys my saas was built with Cursor, zero hand written code”

数週間後:

“guys, i’m under attack… maxed out usage on api keys, people bypassing the subscription, creating random shit on db”

最終結果: サービス完全終了。

非技術者が単独でSaaSを構築し、本番運用した結果です。


なぜ非技術者単独開発は危険か

非技術者が単独で開発することの危険性を整理しましょう。

危険性1: 問題を理解できない

エラーメッセージが出ても、意味が分からない。AIに聞いても、AIの説明が分からない。

危険性2: デバッグできない

問題が起きたとき、どこを見ればいいか分からない。ログの読み方も分からない。

危険性3: セキュリティを判断できない

何が安全で何が危険か、判断基準を持っていない。

危険性4: 学習できない

基礎がないため、経験を積み上げられない。同じ間違いを繰り返す。


vibe codingの「見えない複雑さ」問題

非技術者が見落としがちな「見えない複雑さ」があります。

“The invisible complexity gap: the difference between ‘it works on my machine’ and ‘it’s secure in production.’” 「見えない複雑さのギャップ:『自分のマシンでは動く』と『本番環境で安全』の違い」

見えない複雑さの例:

見えるもの見えないもの
UIが表示されるXSS脆弱性がある
データが保存されるSQLインジェクション可能
ログインできる認証バイパス可能
決済できる不正決済可能

非技術者は「見えるもの」しか確認できません。「見えないもの」を確認するには、技術的知識が必要です。


サイバー攻撃者の視点:AI生成コードの狙い方

攻撃者は、vibe codingで作られたサービスを狙っています。

攻撃者の考え:

  1. 「vibe codingで作った」と公開している
  2. 開発者は非技術者の可能性が高い
  3. セキュリティレビューされていない可能性
  4. 簡単に脆弱性が見つかるかもしれない
  5. 攻撃してみよう

別記事の「ゼロ手書きSaaS」事件では、SNSで公開した直後から攻撃が始まりました。


技術者との協業モデル

非技術者がアプリを作りたい場合、技術者との協業 が必要です。

協業モデル1: 技術顧問

  • 非技術者が主導でvibe coding
  • 技術者がセキュリティレビュー
  • 本番デプロイ前に確認

協業モデル2: ペアプログラミング

  • 非技術者がプロンプトを考える
  • 技術者が生成されたコードをレビュー
  • 一緒に修正

協業モデル3: 役割分担

  • 非技術者:UI/UX、ビジネスロジック仕様
  • 技術者:実装、セキュリティ、インフラ

非技術者が学ぶべき最低限

非技術者がvibe codingを行う場合、最低限の知識 は必要です。

学ぶべきこと:

  1. プログラミングの基礎概念

    • 変数、関数、条件分岐、ループ
    • これがないとAIの出力を理解できない
  2. セキュリティの基礎

    • OWASP Top 10の概要
    • 認証と認可の違い
    • APIキーの扱い方
  3. デバッグの基礎

    • エラーメッセージの読み方
    • 開発者ツールの使い方
    • ログの確認方法
  4. Gitの基礎

    • バージョン管理
    • 変更の追跡

「プロトタイプ止まり」の覚悟

非技術者単独でできることには限界があります。

非技術者単独で可能なこと:

  • アイデアの検証(プロトタイプ)
  • デモの作成
  • 個人利用のツール

非技術者単独では危険なこと:

  • 本番サービスの運用
  • ユーザーデータの取り扱い
  • 決済処理
  • 公開サービス

「プロトタイプまではvibe codingで、本番は技術者と」という覚悟が必要です。


Builder.AI事件の教訓

別記事で紹介したBuilder.AI事件を思い出してください。

「技術的知識なしでソフトウェアを作れる」を売りにしたBuilder.AIは、$15億の評価額から破産しました。

そして、顧客たちは「使えないプロダクト」を抱えて途方に暮れました。

「誰でもアプリを作れる」という夢は、現時点では幻想 です。


この事例から学ぶべき教訓

「非技術者単独開発」から学ぶべきことは以下の通りです。

  1. 非技術者単独での本番運用は危険

    • 問題を理解できない、デバッグできない
  2. 「見えない複雑さ」がある

    • 「動く」と「安全」は別
  3. 攻撃者はvibe codingサービスを狙う

    • SNSで公開するのは危険
  4. 技術者との協業が必要

    • レビュー、ペアプログラミング、役割分担
  5. 最低限の技術知識は必要

    • プログラミング基礎、セキュリティ基礎
  6. プロトタイプ止まりの覚悟を

    • 本番は技術者と一緒に

まとめ:重要ポイントの振り返り

  • vibe codingの夢「技術知識なしでアプリを作れる」
  • しかし「ゼロ手書きSaaS」事件のような 破滅的な結果
  • 非技術者は 問題を理解できない、デバッグできない
  • 「見えない複雑さ」 を確認するには技術知識が必要
  • 技術者との協業 が必要:レビュー、ペア、役割分担
  • 教訓:プロトタイプまではvibe coding、本番は技術者と

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